「SUNTORY
マーメイド号」の設計は、前回の「MALT'S マーメイド3号」に引き続き、横山一郎氏が担当しています。
氏は日本のヨット界を代表する設計者でニッポンチャレンジ・アメリカズカップ艇の設計を担当するなど、現在、
日本が誇る世界的なヨットデザイナーとして注目されています。 今回の航海は前回に比べて、
数倍の距離になる航海のため艇も長く、構造、コンセプトともに大きく異なる設計になりました。
船体は耐食アルミの溶接構造で全長13.1m(43フィート)、幅が2.4mとスリムな船型で長距離クルージングに特化した船といえます。
キールの重量は船体重量の38%程度の重量比ですが、復元力を確保するため3.0mの深いキールとし、下端に鉛のバブルを取り付ける構造にしました。
強度の高い耐食アルミの船体は信頼度が高く、船体構造は航海の性質上、安全率を上げているので決して軽い構造ではありませんが、
幅が狭く極力シンプルな内装にしたため、結果としては長さの割に軽い船体となりました。
セールプランは1本マストのカッターリグ・スループ(前側に2本以上のフォアーステイを持ってそれぞれにジブセールを装備できる帆装)、
総セール面積は小さめですが、フォアステイを3本持ち、それぞれに巻き取ることができるジブセール(前帆)を備えています。
風速・風向にあわせて使い分けと面積調整が簡単に行なえ、微風から強風まで姿勢を正して帆走出来ます。
メインセール(後帆)も効果的に面積を小さくする方法を採用しました。
船体の幅が狭いことは波にもまれて帆走する上での抵抗が小さく、小さいセールで性能を確保することが可能になります。
小さいセールは力をセーブして操船でき、労力を軽減し体力を温存するが出来ます。
また、多くの荷物を積んだ状態でも、総重量と長さの比率(排水量長さ比)が普通のヨットの比率より大幅に長い値となっており、
航海スピードの上限が高くなっています。安全面では氷山や丸太との衝突対策としてバウ(船首)とスターン(船尾)に水密隔壁(コリジョンバルクヘッド)を持ち、
浸水防止を図っています。
基本的な設計コンセプトとして“体力を消耗しないで快適に航海する。一人で行く航海だからスペースもそれなりに。
効率良く帆走するため抵抗の少ない船型と小さなセール面積で、長さだけは欲しい。 氷山に出会っても信頼感のあるアルミの船体で……”といった内容は堀江氏自信が希望したことでした。 |